相続法が改正されました!(その5)〜遺言執行者
今回の相続法改正によって、遺言執行者の権限が明確になり、執行に際して対相続人間の権利関係も明確になりました。
遺言執行者に関する民法の主な改正点を列挙すると、以下のとおりです。
(遺言執行者の権利義務ー民法1012条)
遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。
2 遺言執行者がある場合には、遺贈の履行は、遺言執行者のみが行うことができる。
(遺言の執行の妨害行為の禁止ー民法1013条)
遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げる行為をすることはできない。
2 前項の規定に違反してした行為は、無効とする。ただし、これをもって善意の第三者に対抗することができない。
3 前2項の規定は、相続人の債権者(相続債権者を含む。)が相続財産についてその権利を行使することを妨げない。
(遺言執行者の行為の効果ー民法1015条)
遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示してした行為は、相続人に対して直接にその効力を生じる。
(遺言執行者の任務の開始ー民法1007条)
遺言執行者が就職を承諾したときは、直ちにその任務を行わなければならない。
2 遺言執行者は、その任務を開始したときは、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければならない。
つまり、遺言執行者は、「相続人の代理」ではなく、「遺言の内容を実現するため」に権利義務を有することが明示されました。相続人に対しても、「直接」に効力を生じることになります。そのため、遺言執行者が任務を開始した際には、遅滞なく相続人に遺言の内容を通知することになります。
また、特定遺贈がなされた場合において、遺言執行者がいる場合は、遺贈の履行は遺言執行者のみが行うことになります。特定遺贈における遺言執行者の具体的権限は、遺贈義務の内容によって当然に定まりますが、遺言者が特別な意思表示をしていれば、その意思に従うことになります。
特定財産承継遺言がなされた場合においては、遺言執行者は、対抗要件を備えるために必要な行為をすることができるようになります。この財産が預貯金債権である場合は、遺言執行者はこの対抗要件を備える行為の他に、預貯金の払い戻しの請求やその預貯金の解約申し入れをすることができるようになりました(民法1014条)。
旧法下では、遺言において、遺産分割方法の指定の対象が「不動産」であった場合には、「相続させる」旨の文言があったときには、登記実務上、受益相続人が単独で登記申請ができるものとされてきました。つまり、遺言執行者に出番がなかったのですが、今回の改正において、遺言執行者に対抗要件を具備すべき権限を認めることになりました。
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