離婚に伴うマイホームの財産分与に係る税について
離婚に伴って財産分与・慰謝料としてマイホームを配偶者(妻)の名義に換える場合があります。この場合、もらう側(妻)と渡す側(夫)にどのような税金が発生するのでしょうか?
離婚に伴う財産分与の考え方としては、婚姻中に生じた財産を離婚に伴って清算するという考え方のため、普通に考えれば、経済的な利益は生じていないので、贈与税等の税金は発生しないようにも思えます。慰謝料も同様で、贈与という性格ではないように思えます。しかし、税金を取る側は、違う考えのようですので、解説します。
<もらう側に対する課税>
・財産分与の法的な意味合いは、婚姻中に蓄えた財産の清算行為や離婚後の扶養及び有責配偶者の慰謝料という意味が入っているため、贈与による取得ではない。このため贈与税は課税されない。
・通常の不動産の所有権移転登記と同様に、登録免許税(固定資産評価額の2%)と不動産取得税(固定資産評価額の3%)は課税される。
・財産分与の額が過大で明らかに課税を回避すべきものとみなされた場合は、贈与税が課税される場合もある。
<渡す側に対する課税>
・財産分与を財産分与義務(債務)の消滅という経済的な利益を対価とする不動産の譲渡と捉え、譲渡益に対して、所得税、復興特別所得税及び住民税が課税されます。
・慰謝料としてマイホームを譲渡した場合も同様で、慰謝料支払義務(債務)の消滅という経済的な利益を対価とする不動産の譲渡として、譲渡益に対して所得税、復興特別所得税及び住民税が課税されます。
・離婚すると夫婦関係が無くなるので、一定の要件を満たせば、「3000万円の特別控除の特例」が認められます。
以上に述べたことは、財産としてマイホームが機能している場合です。離婚の実務では、オーバーローンの物件をどうするかということや、義務者(夫)が残債務の支払を続けて、権利者(妻)がマイホームに住み続ける場合に、義務者(夫)の支払が滞ったときはどうするかということや、そもそも抵当権付きの不動産の名義変更に金融機関が応じるかといった様々なことが問題となります。
所得税の基礎知識(その5)〜公的年金等に係る雑所得の速算表
公的年金等に係る雑所得の金額は以下のとおりです。
(A)×(B)− (C)= 雑所得金額です。つまり、65才以上のヒトで「公的年金などの収入金額の合計額」が350万円のヒトは、350万円 × 0.75 − 37万5000円 = 225万円 となり、この金額が所得税に課税される雑所得金額となります。(平成30年4月1日現在)
<受給者年齢が65才未満の場合>
(A)公的年金等の合計額(B)割合 (C)控除額
70万円未満・・・・・・・雑所得金額は 0円
70万円〜130万円未満 1.00 70万円
130万円〜410万円未満 0.75 37万5000円
410万円〜770万円未満 0.85 78万5000円
770万円以上 0.95 155万5000円
<受給者年齢が65才以上の場合>
(A)公的年金等の合計額 (B)割合 (C)控除額
120万円以下・・・・・・・雑所得は 0円
120万円〜330万円未満 1.00 120万円
330万円〜410万円未満 0.75 37万5000円
410万円〜770万円未満 0.85 78万5000円
770万円以上 0.95 155万5000円
所得税の基礎知識(その4)〜給与所得控除額の速算表
給与所得控除額の速算表を掲載します。
給与収入金額 控除額
〜 162.5万円以下 65万円
162.5万円超 〜 180万円以下 収入金額 × 40%
180 万円超 〜 360万円以下 収入金額 × 30% + 18万円
360 万円超 〜 660万円以下 収入金額 × 20% + 54万円
660 万円超 〜 1000万円以下 収入金額 × 10% + 120万円
1000万円超 220万円
所得税の基礎知識(その3)〜所得税の税額速算表
所得税の税額速算表を掲載します。
課税所得金額(A) 税率(B) 控除額(C)
195万円以下 5% 0円
195万円超 〜 330万円以下 10% 9.75万円
330万円超 〜 695万円以下 20% 42.75万円
695万円超 〜 900万円以下 23% 63.60万円
900万円超 〜 1800万円以下 33% 153.60万円
1800万円超 〜 4000万円以下 40% 279.60万円
4000万円超 45% 479.60万円
* 別途、復興特別所得税(基準所得税額×2.1%)が課税されます。
所得税の基礎知識(その2)〜10種類の所得と課税方式
所得税を構成する10種類の所得と課税方式を説明します。(赤字は別途説明)
(1)利子所得=収入金額
〜公社債、預貯金の利子、公社債投資信託等の収益の分配による所得
(2)配当所得=収入金額 − 株式等取得のための負債利子
〜剰余金の配当、利益の配当、剰余金の分配、証券・投資信託の収益分配等による所得
(3)事業所得=総収入金額 − 必要経費
〜農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業などの事業による所得
(4)不動産所得=総収入金額 − 必要経費
〜不動産、不動産上の権利、船舶・航空機の貸付による所得
(5)給与所得=総収入金額 − 給与所得控除額
〜給料、賃金、俸給、及び賞与並びに当該性質を有する給与による所得
(6)雑所得=公的年金等の収入金額 − 公的年金等控除額
〜国民年金、厚生年金、確定拠出年金
=公的年金等以外の収入金額 − 必要経費
〜個人年金、原稿料、講演料
(7)一時所得=総収入金額 − 収入を得るために支出した金額 − 50万円
〜事業等の所得以外の所得のうち、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時的な所得で、労務又は資産の譲渡の対価の性質を有しないモノ(対象物;クイズの賞金、生命保険・損害保険の満期金、拾得物の報労金)
(8)譲渡所得=株式・・・・総収入金額 −(取得費+譲渡費用+負債利子)
土地・建物・総収入金額 −(取得費+譲渡費用) − 特別控除額
上記以外・・総収入金額 −(取得費+譲渡費用) − 50万円
〜資産の譲渡による所得(対象物;土地・建物・借地権・機械・車両・ゴルフ会員権・著作権など、30万円を超える宝石・貴金属・書画・骨とう品の譲渡)
(9)山林所得=総収入金額 − 必要経費 − 50万円
〜山林の伐採又は譲渡による所得
(10)退職所得=(総収入金額 − 退職所得控除額 )× 1/2
〜退職手当、一時恩給など及びこれらの性質を有する給与による所得
所得税の基礎知識(その1)〜所得税の仕組み
所得税の仕組みを説明します。所得税は、個人がその年に得た収入を種類ごとに分類し、所得を計算して、その所得の合計額から必要経費を差し引き、その残額に税率を乗じることで税金の額を算出します。
以下の手順を踏んで申告納税額を算出します。
(1)所得金額を計算する 〜所得金額とは、その年の収入金額から、その収入を得るための必要経費を差し引いたモノです。
(2)総所得金額を算出する 〜総合課税の対象となる所得は、事業所得、不動産所得、配当所得、利子所得、給与所得、譲渡所得、一時所得、雑所得です。これらの所得を合算した金額を総所得金額といいます。なお、事業所得、不動産所得、山林所得、譲渡所得に赤字がある場合は、一定の順序にしたがって黒字の金額から赤字の金額を控除して、総所得金額を計算します。
(3)総所得金額から所得控除の合計額を差し引き、課税総所得金額を求める 〜所得税は、担税力に応じた課税を目的としています。そのため、扶養親族の数・年齢、災害等の損失、医療費、保険料などに配慮する必要があります。そのため、14種類の所得控除があります。総所得金額から所得控除の合計額を差し引いたモノを課税総所得金額といいます。
(4)税率を適用して算出税額を求める 〜課税総所得金額に累進税率を適用して、算出されたモノが算出税額です。
(5)税額控除があれば差し引く 〜配当控除、住宅ローン控除、外国税額控除があれば差し引く
(6)源泉徴収税額を差し引いて申告納税額を出す 〜給与や配当、原稿料、印税などの支払いを受ける際に、源泉徴収された税額を差し引いて納付税額を求めるコトができます。
次回より個別に解説をさせていただきます。
退職金には税金の控除があります!
個人の所得に関して、給与所得に所得税がかかるように、退職金にも当然に所得税がかかってきます。これは、企業年金(確定拠出年金)を年金ではなく、一時金で受け取った場合も同様です。
- 所得税法上、退職所得の計算方法は、
退職所得の金額=(総収入金額 − 退職所得控除額)× 1/2 です。
この「退職所得控除額」は、勤続年数によって異なります。
20年以下・・・40万円 × 勤続年数 (最低80万円)
20年超・・・・800万円 + 70万円 × (勤続年数 − 20年)
つまり、20年を超えて長く働き続けたヒトに対しては、税法上も恩恵を被れるようになっています。金額が大きいだけに、この控除額はけっこうありがたいモノです。
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