2019.07.12 Friday

相続法が改正されました!(その7)〜特別の寄与制度

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    今回の相続法改正によって、相続人でないモノも特別な寄与を理由として、金銭を請求することができるようになりました。

     

    (民法1050条)

    被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(特別寄与者)は、相続の開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(特別寄与料)の支払を請求することができる。

    2 前項の規定による特別寄与料の支払について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、特別寄与者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から6か月を経過したとき、又は相続開始の時から1年を経過したときは、この限りでない。

    3 前項本文の場合には、家庭裁判所は、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、特別寄与料の額を定める。

    4 特別寄与料の額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない。

    5 相続人が数人ある場合には、各相続人は、特別寄与料の額に第900条から第902条までの規定により算定した当該相続人の相続分を乗した額を負担する。

     

    これまでは、義理の両親を献身的に介護した亡長男の妻は、相続人ではないために相続の恩恵にあずかることはありませんでした。しかし、7月1日以降に開始した相続については、相続人以外の親族であれば、「特別な寄与」をした場合に、「特別寄与料」の請求を親族に対してすることができるようになりました。

     

    ただし、遺産分割協議に直接加わるのではなく、遺産分割とは別に、各相続人に対して、法定相続人に応じて、金銭を請求することになります。金額が折り合わない場合や、特別寄与料の請求に応じない相続人に対しては、家庭裁判所に「協議に代わる処分」を請求することになります。時効期間が短いので、注意しましょう。

     

    これらの規定により、通常の遺産分割調停に際して、相続人とは別に「特別寄与者」がいるのかを把握しておく必要があります。特別寄与料の請求は、時効期間が短いので、この期間を経過後に申し立てるというのも一つの方法でしょう。従来の「寄与分」請求に際して、配偶者の特別な寄与分を考慮することができるのかといった問題も新たに生じています。また、被相続人と養子縁組をしていない配偶者の連れ子は親族一親等として「特別寄与者」に含まれますが、内縁や事実婚の配偶者は含まれませんので、注意してください。

     

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    2019.07.11 Thursday

    相続法が改正されました!(その6)〜遺留分制度の見直し

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      今回の相続法改正により、「遺留分減殺請求」が「遺留分侵害額請求権」、つまり物権的な請求が金銭で請求する形に変わりました。

       

      以下、遺留分侵害額について解説します。

       

      (民法1046条ー遺留分侵害額の請求)

      遺留分権利者及びその承継人は、受遺者(特定財産承継遺言により財産を承継し又は相続分の指定を受けた相続人を含む。)又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる。

      2 遺留分侵害額は、第1042条(遺留分の帰属及びその割合)の規定による遺留分から第一号及び第二号に掲げる額を控除し、これに第三号に掲げる額を加算して算定する。

      一 遺留分権利者が受けた遺贈又は第903条1項(特別受益)に規定する贈与の価額

      二 第900条から第902条まで、第903条及び第904条の規定により算定した相続分に応じて遺留分権利者が取得すべき遺産の価額

      三 被相続人が相続開始の時において有した債務のうち、第899条の規定により遺留分権利者が承継する債務

       

      法務省のパンフレットによると、遺留分と遺留分侵害額について、以下の計算式によって算定します。

       

      遺留分 = (遺留分を算定するための財産の価額(注1))× (2分の1(注2)) × (遺留分権利者の法定相続分)

      遺留分侵害額 = (遺留分) − (遺留分権利者の特別受益の額) − (遺留分権利者が相続によって得た積極財産の額) +(遺留分権利者が相続によって負担する債務の額)

       

      (注1)遺留分を算定するための財産の価額=(相続時における被相続人の積極財産の額)+(相続人に対する生前贈与の額(原則10年以内))+(第三者に対する生前贈与の額(原則1年以内))−(被相続人の債務の額)

       

      (注2)直系尊属のみが相続人である場合は3分の1

       

      遺留分制度の目的は、遺族の生活保障や遺産の形成に貢献した遺族の潜在的持分の清算といわれてきましたが、超高齢社会の実現により相続開始時点で子は経済的に自立していたり、核家族化により財産形成に寄与する場面が少なくなってきました。そして、この遺留分制度がかえって事業承継の障害となっている指摘が多かったようです。

       

      このため、今回の改正では、事業承継の妨げとなる不動産その他の事業用財産が共有状態となることを防ぎ、相続人の特別受益をカウントする期間を10年に限定したことに意味があると言われています。ただし、民法1046条2項1号にあるように、遺留分を主張する者には、特別受益の制限がありませんので、ご注意願います。

       

      また、相続財産としては不動産の他にめぼしい財産が無い場合を考慮して、受遺者は、裁判所に対して、支払期限の猶予を求めることができるようになりました(民法1047条ァ法

       

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      2019.07.09 Tuesday

      相続法が改正されました!(その5)〜遺言執行者

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        今回の相続法改正によって、遺言執行者の権限が明確になり、執行に際して対相続人間の権利関係も明確になりました。

         

        遺言執行者に関する民法の主な改正点を列挙すると、以下のとおりです。

         

        (遺言執行者の権利義務ー民法1012条)

        遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。

        2 遺言執行者がある場合には、遺贈の履行は、遺言執行者のみが行うことができる。

         

        (遺言の執行の妨害行為の禁止ー民法1013条)

        遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げる行為をすることはできない。

        2 前項の規定に違反してした行為は、無効とする。ただし、これをもって善意の第三者に対抗することができない。

        3 前2項の規定は、相続人の債権者(相続債権者を含む。)が相続財産についてその権利を行使することを妨げない。

         

        (遺言執行者の行為の効果ー民法1015条)

        遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示してした行為は、相続人に対して直接にその効力を生じる。

         

        (遺言執行者の任務の開始ー民法1007条)

        遺言執行者が就職を承諾したときは、直ちにその任務を行わなければならない。

        2 遺言執行者は、その任務を開始したときは、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければならない。

         

        つまり、遺言執行者は、「相続人の代理」ではなく、「遺言の内容を実現するため」に権利義務を有することが明示されました。相続人に対しても、「直接」に効力を生じることになります。そのため、遺言執行者が任務を開始した際には、遅滞なく相続人に遺言の内容を通知することになります。

         

        また、特定遺贈がなされた場合において、遺言執行者がいる場合は、遺贈の履行は遺言執行者のみが行うことになります。特定遺贈における遺言執行者の具体的権限は、遺贈義務の内容によって当然に定まりますが、遺言者が特別な意思表示をしていれば、その意思に従うことになります。

         

        特定財産承継遺言がなされた場合においては、遺言執行者は、対抗要件を備えるために必要な行為をすることができるようになります。この財産が預貯金債権である場合は、遺言執行者はこの対抗要件を備える行為の他に、預貯金の払い戻しの請求やその預貯金の解約申し入れをすることができるようになりました(民法1014条)。

         

        旧法下では、遺言において、遺産分割方法の指定の対象が「不動産」であった場合には、「相続させる」旨の文言があったときには、登記実務上、受益相続人が単独で登記申請ができるものとされてきました。つまり、遺言執行者に出番がなかったのですが、今回の改正において、遺言執行者に対抗要件を具備すべき権限を認めることになりました。

         

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        2019.07.08 Monday

        相続法が改正されました!(その4)〜一部分割

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          相続財産が多かったり、権利関係が複雑だったりして、一部の遺産分割を先行させた方がスムーズにいく場合があります。そこで今回の相続法改正にあたって、遺産の一部分割ができる旨を明示しました。

           

          (民法907条)

          共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができる。

           

          もっとも、これまでも共同相続人が全部分割であると考えて遺産分割した後に、新たに遺産が発見されたような場合には、残った遺産を相続人で分割することは行われてきました。今後は、相続人間で合意が得られれば、予め一部の遺産を分割協議することも可能であるという解釈になるようです。

           

          このように考えても、面倒な不動産を後回しにして、預貯金のみを先に分配してしまうと、結果的に不動産を受けた人が代償金を支払えないといった場合も想定され、このような事態を避ける工夫をする必要もありそうです。

           

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          2019.07.05 Friday

          相続法が改正されました!(その3)〜遺産分割前の財産処分

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            今回の相続法改正において、共同相続人は、遺産分割前に遺産に属する預貯金債権について、一定の範囲で単独で権利を行使することができるようになりました(民法909条の2)。また、同条によらずに預貯金を引き出したり、遺産分割の前に相続財産が処分された場合に、公平の見地から、共同相続人全員の同意により、遺産分割時の遺産として存在するとみなすことができるという考えを示しました。

             

            (民法906条の2)

            遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合であっても、共同相続人は、その全員の同意により、当該処分された財産が遺産の分割時に遺産として存在するものとみなすことができる。

            2 前項の規定にかかわらず、共同相続人の一人又は数人により同項の財産が処分されたときは、当該共同相続人については、同項の同意を得ることを要しない。

             

            つまり、共同相続人の中に遺産を処分した相続人がいる場合において、公平の見地から、処分された財産も遺産分割時に遺産として存在するモノとみなし、それに関して、処分した相続人の同意は不要としました。従来の実務では、相続人ら関係者全員の合意が無いと、処分されてしまった財産に関しては、遺産分割において取り扱うことができませんでした。今後はこの規定により、より柔軟に対応が可能となります。

             

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            2019.07.04 Thursday

            相続法が改正されました!(その2)〜配偶者保護の方策

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              令和元年7月1日から改正された相続法ですが、中でも高齢の配偶者保護の方策がいくつかあります。そのうち、配偶者居住権は、令和2年4月1日からスタートするので、今回は、姻期間が20年以上の夫婦間における居住用不動産の贈与に関する優遇措置について解説します。

               

              これは、婚姻期間が20年以上の夫婦間で行われた自宅の土地・建物の贈与については、特別受益の持ち戻しを免除するというものです(民法903条ぁ法つまり、婚姻期間が20年以上の夫から妻への自宅の生前贈与は、配偶者(夫)の意思を推定し、特別受益を考慮することなく、遺産分割の話し合いをすることが出来るようになります。従って、結果的に配偶者(妻)の取り分が増えることを意味します。

               

              生前の贈与については、遺産の分割に際して、特別受益(民法903条 砲鮃洋犬靴覆韻譴个覆蕕此特別受益に該当すれば、相続財産に持ち戻した上で遺産分割することが必要です。そのため、預貯金については、遺産分割の対象となると考えるように変わってきました(平成28年12月最高裁決定)。

               

              これまで税金面では優遇措置がありました。贈与税の配偶者控除です。「おしどり控除」と呼ばれるもので、婚姻期間が20年以上ある夫婦間での自宅の贈与は、基礎控除の110万円とは別に2000万円までは配偶者控除の特例として非課税とされてきました。

               

              つまり、7月1日以降に開始する相続については、税金面と併せて相続の面でも、高齢の配偶者に有利に活用されることになります。贈与税を念頭に入れた上での生前の相続対策として、一つの選択肢として考えることができそうです。

               

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              2019.07.02 Tuesday

              相続法が改正されました!(その1)〜預貯金の払戻し制度

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                令和元年7月1日以降、遺産分割前であっても、一定の範囲で預貯金の払い戻しができるようになりました。これは、7月1日以前に開始した相続についても同様です。

                 

                これまでは、最高裁の平成28年12月の判例変更によって、金融機関は原則として相続人全員の同意がないと、預貯金の払い戻しに応じてこなかったわけですが、7月1日以降は、葬儀費用や当面の生活費、相続債務の弁済のために、緊急の必要がある場合に、一定の金額を相続人が単独で払い戻すことができるようになりました。これには、二つの方法があります。

                 

                 金融機関の窓口で直接仮払いを請求する場合

                 (相続開始時の預貯金債権の額(口座基準))× 1/3 × 法定相続分

                 つまり、山口銀行に亡くなった人(夫)の名義の600万円の預金があった場合に、妻と長男の二人が相続人である場合(法定相続分が2分の1)には、100万円を仮払いという形で下ろすことができます。ただし、1200万円の預貯金があった場合には、計算上は200万円なのですが、法務省令で一つの金融機関毎に上限が150万円と決められています。従って、150万円までしか払戻を受けられません。ゆうちょ銀行や西京銀行にも預貯金があれば、それぞれ150万円を限度に払戻が可能です。

                 

                家庭裁判所の保全処分を利用する場合

                 150万円では葬儀費用や当面の生活費、相続債務の弁済が賄えない場合、家庭裁判所に仮分割仮処分の申立をすることになります(家事事件手続法200条)。この場合は、仮払いの必要性が認められる場合には、他の共同相続人の利益を害しない限り、要件を緩和して仮払いが認められるようになりました。

                 

                以上の制度は、あくまでも仮払いの制度なので、遺産分割協議を最終的にした上で、きちんと解約手続をとる必要があります。遺言がある場合には、対抗問題を生じることもあり、手続は慎重に行いたいものです。個別の問題点については、今後預貯金の解約手続を進めていく上で分かったことを本ブログで公開していこうと思います。

                 

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                2019.06.07 Friday

                遺留分を侵害された者は、誰にいくら請求できるの?

                0

                  令和元年7月1日から改正される遺留分制度の見直しについて、法務省によるパンフレットによると、

                   

                  遺留分とは、兄弟姉妹以外の相続人について、その生活保障を図るなどの観点から、最低限の取り分を確保する制度です。今回の改正により、遺留分を侵害された相続人は、被相続人から多額の遺贈又は贈与を受けた者に対して、遺留分侵害額に相当する金銭を請求することができるようになります。

                   

                  遺留分及び遺留分侵害額については、次の計算式により算定します。

                   

                  遺留分=(遺留分を算定するための財産の価額(*1)× 2分の1(*2))×(遺留分権利者の法定相続分)

                   

                  遺留分侵害額=(遺留分)−(遺留分権利者の特別受益の額)−(遺留分権利者が相続によって得た積極財産の額)+(遺留分権利者が相続によって負担する債務の額)

                   

                  *1 ・・・遺留分を算定するための財産の額=(相続時における被相続人の積極財産の額)+(相続人に対する生前贈与の額(原則10年以内)+(第三者に対する生前贈与の額(原則1年以内)−(被相続人の債務の額)

                   

                  *2・・・直系尊属のみが相続人である場合は3分の1

                   

                  以上でお分かりのように、遺留分を請求する場合は、前提となる遺産の範囲(遺留分侵害額)について、注意が必要です。

                   

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                  2019.06.06 Thursday

                  遺留分(イリュウブン)って何?

                  0

                    今回は、遺留分について解説します。

                     

                    遺言があった場合に、遺留分を侵害されたということで、遺留分を請求されたという話を耳にすることは多いのではないかと思います。つまり、亡くなった人と一定の法定相続人には、一定割合の相続分が予め保障されている制度です。

                     

                    兄弟姉妹以外の相続人には「遺留分」が認められており、配偶者や子どもには、法定相続分の2分の1の割合の遺留分が認められています(民法1042条)。遺言者の意思が遺言では絶対と言われていても、遺留分を侵害している場合は、「争族」の火種を残すことになります。

                     

                    つまり、4000万円の遺産を残して、夫が亡くなった場合は、妻は1000万円、長男は500万円、長女も500万円は最低限の遺産として保障されていることを意味します。遺言を作った場合に、この金額を侵害する場合は、遺言書の付言事項に理由を記しておくなどして、「遺留分」に対する配慮をしておく必要があります。

                     

                    今回の法改正により、遺留分を侵害された人は、遺言によって財産を与えられた人に対して、お金で侵害額を請求することになります。

                     

                    遺留分を侵害されたことで、金銭での請求をする場合、遺留分権利者は、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年以内に請求しないと時効にかかります(民法1048条)ので、注意しましょう。

                     

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                    2019.06.05 Wednesday

                    寄与分(キヨブン)って何?

                    0

                      今回は、寄与分について、分かりやすく解説します。

                       

                      寄与分とは、亡くなった方の財産の維持又は増加に「特別の寄与」をした相続人に対して、相続財産からその寄与分を差し引いた上で、相続分を算定する仕組みです。亡くなった方の生前に、長女が無償で介護をしたり、長男が家業に貢献して、財産の増加に寄与した場合に、その貢献度を与した上で金額に換算して、相続分を算定することになります(民法904条の2)。

                       

                      つまり、相続について話し合う際には、現在残っている財産のみならず、生前に亡くなった方にどのような貢献をして、残された財産の維持や増加に貢献したのかも加味した上で、話し合いをすることになります。相続人間で金額が決まらない場合は、家庭裁判所の調停・審判の中で決めていくことになります。

                       

                      今回の改正により、相続人以外の親族にも特別寄与料(金銭)の請求ができるようになりました(民法1050条)。

                       

                      もっとも、亡くなった方に遺言がある場合には、次回で説明する遺留分(いりゅうぶん)が問題となることがあります。

                       

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