2020.06.23 Tuesday

「遺留分侵害額の請求」について

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    遺留分とは、一定の相続人(遺留分権利者)について、被相続人(亡くなったカタ)の財産から法律上取得することが保障された最低限の取り分のことで、被相続人の生前の贈与や遺贈によっても奪われることがないモノです。

     

    被相続人が財産を遺留分権利者以外のモノに贈与又は遺贈した場合に、遺留分を侵害されたモノは、その侵害額に相当する金銭の支払を請求することができます(民法1046条)。

     

    では、具体的にどのような手続が必要なのでしょうか?

     

    まず、内容証明郵便を利用して、被相続人から財産を受けた相続人又は受遺者に対し、「遺留分侵害額を請求する意思」を明示する必要があります。その上で、被相続人から財産を受けた相続人又は受遺者と話し合いをすることになります。この話し合いがうまくいかない場合には、家庭裁判所に家事調停を申し立てることになります。

     

    調停でも話し合いがまとまらない場合は、民事裁判となります。この場合に、遺留分侵害額請求権の時効の問題が生じます。

     

    遺留分侵害額の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないと時効によって消滅します。相続が開始した時から10年を経過した場合も、同様に時効によって消滅します(民法1048条)。

     

    家事調停の場合、通知や呼び出しは普通郵便で行います。そのため、相手方に意思表示が届いていない場合も生じます。調停の受付段階で、内容証明郵便などで、相手方に対する意思表示をしているかを確認することもありますが、調停自体の要件とはなっていないので、スルーして調停を進める場合もあります。いざ民事裁判となるにあたって、時効が問題となる場合もありますので、気をつけましょう。(民法147条により、家事調停をした場合は、終了の時から6か月を経過するまでは時効が完成しないとありますが、これは相手方が何らかの書面を出してきたり、出頭して意見を言った場合を指すモノと考えられます。)

     

    そのため、まず内容証明郵便で遺留分を請求する意思を明確にしておくことはもちろんのことですが、その後の調停が不成立で終了した場合は、速やかに民事裁判を提起して、時効にかからないようにすることが大切です。

     

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    2020.06.16 Tuesday

    「特別の寄与」について

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      相続法の改正により、新たに創設された「特別の寄与」制度ですが、具体的にどのような手続をとればよいかご存じでしょうか?

       

      そもそも改正前の相続法においては、「寄与分」は相続人にしか認められておらず、例えば亡くなった長男の妻がいくら献身的に義理の父母のお世話をした場合でも、遺産分割の手続に関与することはありませんでした。この問題に対して、改正相続法では、相続人以外の親族であっても、「特別寄与者」として、「特別寄与料」の支払を、相続人に対して、金銭で請求することができるようになりました。

       

      被相続人(亡くなった方)に対して、無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別な寄与をした被相続人の親族(特別寄与者)は、相続開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額(特別寄与料)の支払いを金銭で請求できるようになりました(民法1050条 法

       

      * 「特別寄与者」としての要件は、従来の「寄与」の要件と変わりません。対象者が「親族」ということで、相続人以外にも認められるようになりました。この制度は、被相続人の財産の維持又は増加についての特別な寄与をしたヒトがいる場合に、そのヒトにも相続財産の分配をあずかることを認めることが実質的な公平の理念にかなうとの考えに基づきます。

       

      当事者間(この場合は、相続人と特別寄与者)で話し合いをして、協議が調わない場合や、協議をすることができない場合は、家庭裁判所に申立をすることになります(民法1050条◆法

       

      つまり、まずは関係者で話し合いをしてみて、埒があかなければ家庭裁判所に家事調停の申立をすることになります。この調停は、家事事件手続法上、別表第2事件とされており、調停がうまくいかなければ、最終的には家庭裁判所の方で、審判によって「特別寄与者」の判定と、具体的な金額を示してもらえます。なお、「特別な寄与」の申立は、「寄与分」の申立ては異なり、遺産分割の手続とは関係なく申立をすることができます。

       

      家庭裁判所で金額を決める場合の考慮事項としては、「寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額」のほか、相続債務の額、被相続人による遺言の内容、各相続人の遺留分、特別寄与者が生前に受けた利益などの一切の事情が含まれるとされます(民法1050条)。また、特別寄与料の金額としては、亡くなった方の相続財産の価額から遺贈を受けた金額を超えることはできません(民法1050条ぁ法

       

      * 相続人間で法定相続分で分配している場合は法定相続分に応じて、遺言で相続分の指定をされている場合は、指定相続分に応じて、特別寄与料の支払義務があるとされます。

       

      この請求は相続の開始及び相続人を知った時から6か月又は相続開始時から1年を経過するまでの間にしなければなりません。

      つまり、上記の期間内に速やかに家庭裁判所に調停を申し立てる必要があります。この期間はいずれも除斥期間とされているので、最長で相続開始時から1年ということになります。

       

      今回の相続法改正において、「遺留分制度」も見直されていますが、遺留分侵害額請求の場合は、一般調停事件と考えられており、調停が不成立の場合は、新たに民事裁判を提起することとなります。民法が改正され、家事調停については、終了の時から6か月を経過するまでは時効が完成しないことになりました(民法147条 法時効については、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年、相続開始時から10年とされています(民法1048条)。

       

      * 「特別な寄与」も「遺留分侵害請求」も調停前置(家事事件手続法257条)が働くため、審判や裁判の前に必ず調停を経なければなりません。時効との関係では、「特別な寄与」は調停不成立と同時に審判に移行しますので、時効の問題は生じないのですが、「遺留分侵害請求」は、家事調停では普通郵便で通知を行うため、相手方が調停に出てこない場合に問題になることがあります。そのため、申立に際して、遺留分侵害請求権を行使したことを疎明する資料(内容証明郵便など)が必要となりますので、ご注意ください。

       

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      2020.05.02 Saturday

      改正相続法と家庭裁判所の実務

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        この本は、元家庭裁判所判事と元主任書記官の共著で、実務家の観点から、分かりやすく改正相続法についての解説が加えられています。「東京家庭裁判所家事第5部(遺産分割部)における相続法改正を踏まえた新たな実務運用」(家庭の法と裁判号外)の監修を行った筆者が、改正相続法を遺産分割手続の時系列に沿って、分かりやすく説例も交えて解説した書籍です。

         

         

        立法担当者が作った「一問一答 新しい相続法」を踏まえて、東京家庭裁判所家事第5部の職員の協力も得て作られているので、実務に精通した方々が書いた信頼のおける一冊です。

         

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        2020.04.27 Monday

        「親権者変更」について

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          離婚時に決めた親権者を変更する場合に、必ず家庭裁判所の調停・審判を経る必要があることをご存じでしょうか?

           

          親権者の変更は、父母の協議のみでは行えず、家事調停又は家事審判でのみ行えることになっています。また、審判で決める場合には、当事者(父母)の陳述を聴くほか、15才以上の子の陳述も聴かなければならないとされています(家事事件手続法169条◆法

           

          これは、家庭裁判所が後見的に子の福祉を配慮して、親権者を変更することが子どもの幸せにつながっているのか否かを判断する必要があるからとされています。親の都合だけで、子の親権者を変更することは認められていないのです。

           

          従って、子どもの親権者を変更するべきかを判断するにあたっては、/童⊆圓鯏初に決めたときの事情、⊃童⊆垰慊蠍紊吠儿垢必要になった事情を詳しく聞きながら、

          (1)父母については、双方の監護能力、性格、年齢、教養、健康状態、子に対する愛情の程度、経済的能力、居住状態、生活環境、親権者となるべき動機、目的、子と接することができる時間、父又は母に代わって子を監護することができるモノの有無、親族の援助協力の可能性、子に他の兄弟姉妹がある場合にはこれらのモノとともに生活ができるか等の事情に基づいて判断するコトになります。

          (2)子については、子の意思、父母への思慕、愛情の程度、子の年齢、心身の状況、現状における適応状況、新しい養育環境への適応能力などに基づき判断します。

           

          いずれにしても、子の視点にたてば、どちらの親も大事な場合が多く、子の成長にとっても、父母の存在は大きいので、少なくても、親子関係は良好な状態で続いていくことを願うばかりです。

           

          * 親権者が亡くなってしまった場合は、親権を持っていない方の親が変更審判の申立をするか、亡くなった親の親族が未成年後見人の審判を申し立てるかいずれかになります。

           

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          2020.04.18 Saturday

          家庭の法と裁判(25号)

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            家庭の法と裁判(日本加除出版)の最新号です。

             

             

            特集改正相続法の最新実務ー配偶者居住権、登記、税務等

              * 改正相続法「配偶者居住権」の実務からみた問題点

              * 配偶者居住権の登記手続

              * 改正相続法施行後の状況ー遺産分割前の預貯金払い戻しに関わる金融実務

             

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            2020.04.04 Saturday

            相続法改正を踏まえた新たな遺産分割の運用が始まります!

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              令和2年4月1日より「配偶者居住権」の制度が始まり、今回の相続法の改正に従った新たな実務の運用が全てスタートします。

               

               

              相続法改正に伴う遺産分割事件の運用に関してこの本では、

               

              1 遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合の取扱い等に関する運用

               

              2 遺産分割前における預貯金の払い戻し制度の創設等に関する運用

               

              3 配偶者居住権に関する運用

               

              4 配偶者短期居住権に関する運用

               

              5 持ち戻し免除の意思表示の推定に関する運用

               

              6 一部分割に関する運用

               

              7 特別の寄与に関する運用

               

              以上の7点につき、今回の改正によって実務上変わってくる点の解説が詳しくなされています。

               

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              2020.03.28 Saturday

              民事執行法が改正され、債務者以外の第三者から情報を取得する手続きが新設されました!

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                令和2年4月1日から民事執行法が改正され、債務者の財産に関する情報を、債務者以外の第三者から取得する情報取得手続が始まります。

                 

                 

                これまでは、審判書や調停調書などの債務名義があっても、債務者の財産が分からなかったり、勤め先が分からないために、債務者の財産を差し押さえることができずに、泣き寝入りするケースが多くあったように思います。

                 

                特に、養育費については、日々子どもに生じるお金でもあるため、今後は円滑な執行が期待されます。そのためにも、債務者の給与に関する情報市町村日本年金機構、国家公務員共済組合連合会、地方公務員共済組合、全国市町村職員連合会や日本私立学校振興・共済事業団に求めることができるようになったことは大きいのではないかと考えます。

                 

                債務者の財産を差し押さえるための情報として、不動産登記所預貯金銀行など(銀行・信用金庫・労働金庫・農業協同組合・貯金事務センター他)に情報を開示するよう求められるようになったことも大きいのではないかと思います。

                 

                今後、現実の運用がどのようになるのかを注意深く見ていきたいと思います。

                 

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                2020.02.29 Saturday

                最高裁〜後見人の報酬を見直しを検討!

                0

                  日本経済新聞によると、最高裁は、利用者の生活支援を確実に実施してもらうために、支援の実施状況により、後見人の報酬を増減する考えを公表しました。つまり、利用者が後見人に支払う報酬の具体的な算定方法を見直すことを明らかにしました。

                   

                  最高裁は、この考えを2月27日に開かれた有識者会議で提示し、これを踏まえて各地の家庭裁判所で検討を始めたようです。

                   

                  これまで、裁判所の実務では、管理財産の額に応じて、一律2万〜5万円の範囲で、基本の報酬額が定められ、付加的事項がなければ、「基本報酬」を12で掛けた金額が毎年の報酬として決定され、管理財産から支弁してきました。

                   

                  ☆ 基本的事務〜財産の調査や収支の確認、利用者の心身や生活状況の把握など

                  ☆ 付加的事務〜不動産の売却、遺産分割協議、福祉サービスの契約締結など

                   

                  将来的には、「基本的事務」についても、個別に実施状況を精査して、報酬を決めていくことになりそうです。このように報酬の算定方法を見直すことになったのは、個別の案件によって、支援の実施状況に違いがあり、一律に報酬額を決定することに合理性がないと判断したからでしょうか?それとも報酬額を減額しないと利用者が増えないと考えたからでしょうか?

                   

                  そもそも、現在の裁判所の態勢から見て、個別の案件毎に支援の実施状況を把握することには無理があります。だからこそ、全国一律に報酬額を決めるようになったものと理解してきました。そもそも、15年前は、まさに個別の案件毎に報酬額を裁判官が決めていました。それが全国一律になってきたのは、後見事件が多くなり、個別の対応が難しくなってきたことと、各都道府県毎に基準が異なっていたために、報酬の基準が東京と大阪で大きく異なっており、利用者から批判が強くなったからだと理解しています。

                   

                  今更昔のような決定方法に戻ることには無理があるような気がします。家庭裁判所の人員が、10年前からみて増えてきたとはいえ、まだまだ繁忙状況はぬぐいきれません。第三者機関により構成された後見センターのようなものができない限り、監督も不十分なままという状況は変わらないでしょう。

                   

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                  2019.12.23 Monday

                  養育費の算定表が改定されました!

                  0

                    最高裁のHPにおいて、本日予定されていた養育費・婚姻費用の算定表の改定版が公表されました。

                     

                    具体的なケースについて見てみましょう。

                     

                    <子ども1人の場合>

                    義務者(多くは同居していない父親)  給与所得:500万円

                    権利者(多くは同居している母親)   給与所得:200万円 

                    15才未満では、4万円 → 5万円 となります。(ただし、個別の特別な事情があれば、考慮される場合があります。)

                    義務者                給与所得:700万円

                    権利者                給与所得:400万円

                    15才以上では、6万5000円 → 7万円 となります。

                     

                    <こども2人の場合>

                    義務者                給与所得:500万円

                    権利者                給与所得:200万円

                    2人とも15才未満の場合は、6万円 → 7万円 となります。

                    義務者                給与所得:700万円

                    権利者                給与所得:400万円

                    1人が15才未満、1人が15才以上では、8万円 → 9万円 となります。

                    義務者                給与所得:1000万円

                    権利者                給与所得: 500万円

                    2人とも15才以上の場合は、13万円 → 14万円 となります。

                     

                    <子ども3人の場合>

                    義務者                給与所得:500万円

                    権利者                給与所得:200万円

                    3人とも15才未満の場合は、7万円 → 8万円 となりました。

                    義務者                給与所得:700万円

                    権利者                給与所得:400万円

                    1人は15才以上で、2人は15才未満の場合は、9万円 → 11万円 となります。

                    義務者                給与所得:1000万円

                    権利者                給与所得: 500万円

                    3人とも15才以上の場合は、14万円 → 17万円 となります。

                     

                    * 各ケースによって、幅がありますので、確定的な金額ではありませんので、念のため申し添えます。

                     

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                    2019.11.19 Tuesday

                    養育費について

                    0

                      離婚をする際に、未成年の子がいる場合、「養育費」を父母の間で協議して決めることになっています(民法766条 法

                       

                      この協議がうまくいかない時は、家庭裁判所で調停をすることになります。最近は、この養育費の調停事件が多くなってきました。

                       

                      養育費の基本的な考え方として、通常の扶養義務を考えた場合に、生活保持義務生活扶助義務があります。「生活保持義務」とは、自分の生活を保持するのと同程度の生活を保持させる義務をいい、「生活扶助義務」とは、自分の生活を犠牲にしない限度で、被扶養者の最低限の生活扶助を行う義務と考えられています。養育費は、生活保持義務と考えられています。

                       

                      従来、養育費を算定するにあたっては、2003年に判例タイムズで公表された算定表を用いてきました。この算定表で概算を見た上で、個別の事情を考えながら調停を進めていき、調停が不成立に終わり、最終的に審判に至った場合は、個別・具体的な計算をすることになります。ただし、この算定表ができて15年以上も経ってしまい、新たな算定表を望む声も上がっていました。

                       

                      最高裁も、この声を聞き、養育費増額の方向で、新たな基準による算定表の作成にとりかかり、本年12月23日に公表することになりました。

                       

                      ただし、形式的に養育費の増額を図ることも大事なのですが、問題の本質は養育費を決めても、払わないヒトや払えないヒトが増えているということかもしれません。経済格差が広がり、20才代、30才代では自分一人の生活で目いっぱいなため、払える余力がだせないヒトも増えています。一方で、子どもにかかる費用は増加の一方で、この問題を解決しない限り、離婚後にシングルマザーやシングルファーザーとなってしまうと、とたんに貧困に陥る図式から抜け出せないような気がします。

                       

                      あらたな基準による算定表を用いて養育費を算定したとしても、当てはめる非監護者の収入が減っていたのでは、養育費の増大につながらないといった問題もはらんでいます。

                       

                      * 平成30年度の家事調停事件のうち、子の監護処分の占める比率は、25.7%でした。また、別表第二審判事件のうち、子の監護処分の占める比率は、実に49.5%に上っています。(子の監護処分には、養育費のほか、面会交流、子の引渡しなどを含みます。)

                       

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